東京家庭裁判所 昭和46年(少ハ)3号 決定 1971年2月06日
本人 D・R(昭二五・一二・二四生)
主文
本人を昭和四六年一〇月一五日を限度として特別少年院に継続して収容することができる。
ただし、収容継続期間中いつにても仮退院が実現することを妨げない。
理由
本件申請の趣旨は、上記本人は、昭和四五年二月一六日東京家庭裁判所において中等少年院送致決定を受け、現に在院して矯正教育を受けているものであるが、なお矯正教育の必要があるものと認められるので、所定の期間で退院させることは不適当であるというにある。
なお、本人は、本件申請後である昭和四六年一月二二日、成績不良を理由に特別少年院である久里浜少年院に移送されて現在に至つている。
ところで、少年院法第一一条第二項によれば、本件申請時において八街少年院の長が本件申請をなしうる地位にあつたことは疑いの余地がない。次に、上記久里浜少年院への移送後において本件申請が引続きその効力を有するか否かについて検討すると、少年院法第一〇条第一項によれば、少年院の長は一定の要件のもとに在院者を移送することができ、移送の時期に関しては、裁判所のなした少年院の種類の指定を否定するような内容を有することとなる場合を除いては、法的な制約はないものと解され、かつ、本件の如く期間満了時に近接した時期に移送することも矯正教育の便宜等の理由からやむをえない場合もあると考えられるところ、移送されてまもない在院者について移送を受けた少年院の長が収容継続決定の申請をすべきか否かを適確に判断することは困難であつてむしろ移送した少年院の長がこれを適確に判断できるだけでなく、移送を受けた少年院の長の意見は少年院法第一一条第三項に定める手続を通じて自動的に裁判所に伝えられるから、移送したために、移送した少年院の長のした収容継続決定の申請が効力を失うものではないと解する(このように解したからといつて、収容継続決定の申請後の移送が、少年に対する慈愛の精神に欠けた無責任なものであつてはならず、また、移送した少年院の長は移送を受けた少年院の長と密接な連絡を取りつつ移送後の少年の成績等に照らし収容継続決定の申請の取下げなど必要な措置を取らなければならないことは、当然のことであり、家庭裁判所が、これらの点に関し少年審判規則第三八条第一項に定める職責を果たし、必要に応じて同条第二項に定める勧告をなすべきことは、いうまでもない)。
よつて本件申請は、前記移送後も引続きその効力を有すると認めるのが相当である。
そこで、当裁判所調査官森久保卓、久里浜少年院分類保護係長岡田俊二および八街少年院分類保護係長佐々木良夫の各意見を聴いて判断するに、今後における矯正教育の期間と、社会復帰後における保護条件を考慮に入れると、上記のとおりなお継続して少年院に在院させることが適当であると認められるので、少年院法第一一条四項を適用して主文のとおり決定する。
(裁判官 高野昭夫)